こどものことを考えたリノベーション
Home
2023.07.26
こどものことを考えたリノベーション
設計:studio IrodorI+ondesin
間取りが決まっていることの多いマンションでも、それぞれの生活に合わせて自由な空間を作れるのがリノベーションの特徴です。でも、「ご自由にどうぞ!」と言われてもなかなか決められませんよね。そこで必要になってくるのが「誰のためにリノベーションするのか」ということなのです。例えば、在宅ワークの多い夫婦の場合と、小さいこどものいる家族の場合は全く違った空間になっていきます。ただおしゃれにするだけではもったいない。それぞれのライフスタイルに合わせてこそリノベーションする意味があると思うのです。
私は2人目のこどもが生まれるのを機に中古マンション+リノベーションを選択しました。せっかくこどものために引越すのならば、部屋もこどもに優しいつくりにしたい。そんな思いで作った空間です。今回のコラムでは、実際にリノベーションをやってみた経験から快適な空間づくりのちょっとしたポイントをお伝えできればと思っています。
【その1】スイッチを低い位置につける
まず、最初に注目したのは照明をオンオフするためのスイッチの高さです。一般的にスイッチは床から110~120cmくらいのところに設置されています。これは、身長が100cmに満たない3歳のこどもがギリギリ届くかどうかの高さです。どの建物もだいたい同じ高さなのですが、私は「本当にこの高さがベストなのか」と疑問に思っていたのです。
そこで、我が家では新しく設置するスイッチをすべて高さ100cmのところに設置してみました。実際使ってみると「低いな」という感じは全くありません。おとなも違和感なく使えるうえ、こどもたちに「〇〇の電気消しておいてー」と気軽に頼むことができるのも嬉しいポイントでした。
ちなみに、全てのスイッチを低くしているわけではなく、水回りなどリノベーションしていないところはスイッチが通常の高さに設置してあります。そのスイッチを操作しようとするこどもを観察していると、一生懸命背伸びして押そうとしていたり、踏み台などを持ってきてフラフラしながら押そうとしていたりします。ひっくり返るんじゃないかと、見ているこちらがハラハラしますよね。低スイッチならそんな心配も無用なのです。
後で知ったのですが、世の中にはみんなに使いやすいよう考えられた『ユニバーサルデザイン』というものがあります。これは、年齢・性別・障害の有無・人種などに関わらず誰もが使いやすいようデザインするというもので、住宅以外にもプロダクトや公共交通機関、教育など幅広く取り入れられています。ユニバーサルデザインは具体的な数字で決められているものではないですが、スイッチの高さは車椅子の方でも押せるよう低めを推奨していて、最近よく見かける押す部分が大きくなっているスイッチもユニバーサルデザインを意識したものと言えますね。
【その2】玄関の土間スペースを広くする
以前のコラムでも書かせていただきましたが、我が家は玄関の土間を拡張しました。理由は、ベビーカーが入ると誰も玄関に入れなくなってしまうから。賃貸マンションに住んでいたときは1㎡くらいしかない玄関に3人または4人がひしめき合いながら準備をしていました。それが結構なストレスだったので、玄関の土間拡張はリノベーションをするなら絶対譲れないポイントの一つだったのです。今ではベビーカーが先に玄関に入っても奥まで進めば全員家の中に入れます。こどもがゆっくり靴を脱ぎ履きしていてももう1人が自分の靴までたどり着けます。本当に快適です。
そして、ベビーカーを使わなくなった現在はこどもの自転車を停める場所になっています。他にも荷物をしまう倉庫としての機能や、私の仕事場としても使っています。この原稿も土間にあるワークスペースで書いています。
もちろん土間拡張にも欠点があります。玄関を広くした分寝室など他の部屋が少し狭くなったり、オンライン会議では生活空間の音が筒抜けだったり、こどもが裸足で土間に侵入したり、ロボット掃除機も土間に侵入したり。実際やってみると色々ありますが、今のところ「快適」の方が優っています。
▶前回の土間拡張についての記事はこちら
【その3】回れるような回遊動線をつくってあげる
設計:studio IrodorI+ondesin
料理と皿洗いが好きな私は、通常のシステムキッチンの作業台だけでは飽き足らずアイランドタイプのカウンターを新設しました。すると、作業の効率がアップすると同時にキッチンリビングに円形の動線が生まれたのです。狙ってやったことではないのですが、この行き止まりのない道がこどもに大好評!!無限にグルグル回れる動線は、走り回るのが大好きなこどもにとって格好の遊び場となったのです。ちょっと追いかけっこをしてあげるだけでこどもは大喜びしますよね。自分の好みで作った空間が、思わぬところでこどもたちにウケたのは、予期せぬ効果です。
この「回遊性」は空間を広く感じさせてくれます。観光地の遊歩道などでも、一本道を歩いていて行き止まりになると「ここで終わり」というイメージを与えてしまいますが、円形の動線になっていると端っこがなく、行きと帰りで違う道を通って戻ってこられるので一本道よりも見どころが増やすことができ、同じスペースでも広く感じさせることができるのです。
家にも同じことが言えます。一本の廊下で行き来するより、違う道で家中を回れる方が広く感じることができるのです。我が家は真ん中にトイレやお風呂などの動かせない水回りがあるので家全体を回遊できる間取りにはできなかったのですが、もし次に一軒家を建てるなら回遊できるつくりにしたいと思っています。
こどもに優しいことはおとなにも優しい
低スイッチ、土間スペース、グルグル回れる回遊動線。これらはどれもこどもと暮らすことを前提に考えたリノベーションプランです。ところが、実際に住んでみるとおとなも快適に暮らせることが分かりました。 とはいえ、希望をプランに落とし込むのは素人の私たちには難しかったりします。そんなときは、リフォーム、リノベーションのプロに相談してみましょう。きっと素敵なプランが出来上がるはずです!
▶ほほえみライフでは住まいのリフォームサービスも行っています。詳しくはこちら
投稿者プロフィール
赤井 恒平(あかい こうへい)
ライター・フォトグラファー。埼玉県飯能市でシェアアトリエ「AKAI Factory」を運営するなど、まちづくり業にも携わっています。
現在は築20年のマンションをリノベーションして家族4人で暮らしています。最近は休日に料理をするのが密かなブームです。
Instagram はこちら
浮かせる収納で、キッチンを使いやすくしよう!
庭木の管理は大変!お庭をきれいに保つ方法を知ろう