身近になった農的生活による効果
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2024.08.14
都内から郊外に移住してから3年が過ぎ、土に触れる機会が多くなりました。移住先で知り合った友人のほとんどが畑を持ち、作物を育てています。野菜や花、果物のお裾分けをいただくうちに、今では私も小さな畑を借りて野菜を作り、仲間と一緒に米の栽培を始めました。
作物を育てる友人たちとの付き合いが深まるにつれて、時短、手軽、ミニマルを理想としていた私の生活に、少しずつ変化が生まれています。
手仕事に必要な根気
大量の農作物をいただくにつれて、なるべく早く、効率的にと思っていた生活を見直すようになりました。袋いっぱいのじゃがいもや玉ねぎ、夏野菜など、口に入るまでの状態にするには、どの作物もかなりの手数がかかります。
「カモミールとマロウが咲いたんだけど、取りに来ない?」
5月も半ば過ぎると、カモミールの花が旬を迎えます。今年も農薬や化学肥料を使わずに作物を育てている友人から声がかかりました。
畑には白い花びらが可憐なカモミールが満開。取らないと次の作物が植えられないから、との声に遠慮なく収穫し、花束として家に飾る分もいただきます。
マロウは葉も花も食用として利用できるハーブで、乾燥させた花びらにお湯を注ぐと美しい紫やブルーに発色します。背丈ほどに成長した大きな株から赤紫の花を1つずつ摘み取りました。
移住生活で知ったスローダウンの意味
楽しい収穫の後、待っているのは収穫物をきれいにする作業。この面倒な食材の下処理作業には、意外にも私にとって瞑想にも似た癒しの効果がありました。
カモミールの場合、収穫の後は茎から花の部分だけを摘み取り、カゴの上で乾燥させるといった根気のいる作業が大半です。土がついていたら洗い、枯れた葉がついていたら取り除かなければなりません。
下処理作業が楽しめないと、ただの面倒な作業が続くだけ。時短を意識した簡便な取り方をすれば、花を痛めてしまいます。郊外でスローダウンした生活を送るとは、のんびりすることではなく、手間をかける時間を持つ余裕を楽しむことでした。
ミニマルでは得られない深いお付き合い
移住後は、「自分達だけ」というミニマルな考え方を超えた先に新しいお付き合いが始まりました。畑や米作りに参加する中で、誰かの手が必要になる場面が増えたためです。
仲間と一緒に米を栽培している田んぼでは、田植えや稲刈りはすべて手作業で進めています。除草剤を使わずに米作りをしているので、日々の草取りが発生するのが難点です。
農機具を使えば簡単に終わる作業も、人手を頼るほかにありません。少しでも楽になるように、と草取りにデッキブラシを導入しました。こどもが熱を出したり、介護で来られなかったりする仲間の分は、参加できる人でカバーします。
もし誰かが手伝いを必要としていたら、快く協力する。誰かに助けてもらったら、そのお礼は労力や農作物など、お金の介在しないかたちでお返しするといった積極的なお付き合いの方法が身につきました。
郊外へ引っ越したのは、食生活を整え、自然と触れ合いながらのんびりと生活したいと考えたためでした。しかし、思い描いていたスローライフを始めてみると、やることも人付き合いもどんどん増えています。そして、増えるごとに気持ちの充実度が増しているのも事実です。休むよりも、動くことで得られるリラックス効果をぜひ体験してみませんか。
本コラムは、株式会社西武リアルティソリューションズからの依頼にもとづき、以下、投稿者のコメントを編集して掲載しております。
投稿者プロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりに挑戦しています。
趣味は登山と外で遊ぶこと。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活を実践中です。
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